フレンチの名店でソムリエとして活躍後、ワインディレクターとして数々の飲食店やエアラインなどのアドバイザーを務め、ご自身のレストランAnDiではベトナム料理に合う本格焼酎も提供する大越基裕氏に、本格焼酎・泡盛と料理双方の魅力を引き出すペアリングについて教えていただきました。
【写真】東京タワーを背にした大越氏のオフィスにて
【大越 基裕(おおこし・もとひろ)氏プロフィール】
ソムリエ:国際ソムリエ協会 インターナショナルA.S.I.ソムリエ・ディプロマWSET Sake Level3 & Educator。ワインテイスター。ミシュランガイド東京2018に選出されたベトナム料理店An Diオーナー。
渡仏を経て2001年より銀座レカンのソムリエ。5年後再度渡仏し3年間葡萄栽培と醸造を学び帰国後に同店のシェフソムリエに就任。2013年ワインテイスター、ワインディレクターとして独立。世界各国を巡り、コンサルタント業、講演などもこなす。
日本の酒にも精通し、本格焼酎・泡盛や清酒と料理とのマリアージュにも定評がある。当会料飲店向け本格焼酎・泡盛セミナー講師。
【写真】インタビューに丁寧に応じてくださる大越氏
トレンドを見据えることが大切
銀座のフレンチレストランに勤務していた2009年頃から、シェフと共に料理とワインのペアリングに取り組み、5年後の独立を機に、清酒や本格焼酎をフレンチに合わせ取り入れる試みを始めました。
昨年オープンした私の店では野菜をふんだんに用いるベトナムの料理をアレンジしたモダンベトナム料理に、ワインに加え本格焼酎や清酒も取り入れたペアリングを提案しています。
世界の今の食のトレンドは“ライト&フレッシュ”です。新鮮な食材やオーガニック素材、発酵食品を好み、重たい味わいは敬遠される傾向にあります。健康指向がベースにあり、主流として続くと思っています。ペアリングはそうした点も押さえて作り上げるといいと思います。
ペアリングは革新の時代
醸造酒に比べ、香りが主で味がニュートラルなことが蒸留酒の特徴と言えます。本格焼酎・泡盛もNGな組み合わせがない、どんな食にも合わせやすい酒ですが、「料理の味を洗い流してくれる」「邪魔をしない」というだけでは、ペアリングとは言えません。
料理に酒を組み合わせることで互いに引き立て合い、食事の味わいを深め、香りの広がりを一層感じられるようにするのが最上のペアリングです。
フレンチは常にペアリングを意識し、料理も酒も心に残る体験にもっていこうとする食文化で、“ラム肉にはカベルネ・ソーヴィニヨン”といった定番の組み合わせも生み出してきたりしました。が、今日では流通が発達して世界の新鮮な食材が手に入るようになり、真空調理や低温調理など新しい調理法も取り入れられ、料理の世界は凄い勢いで変化しています。合わせてペアリングも定番にとどまらず、どんどん新しいものが生まれるべきで、本格焼酎・泡盛も当然選択肢に入ってくるわけです。
料理と酒の組み合わせはボーダレスになりつつあります。その一方で、料理の進化に合う酒の提案が追いついていないのが現状です。日々進化する料理に、様々な酒をペアリングさせる力が求められています。
本格焼酎・泡盛の特徴をどう活かすか
本格焼酎・泡盛を料理にペアリングする際は温度や質感による「テクスチャーのペアリング」、香りを活かす「風味のペアリング」を意識するといいでしょう。
私が初めて本格焼酎を取り入れたのは、新玉ねぎのポタージュスープ。トロリとした食感に、お湯を足して香りを強調させた芋焼酎の香りと舌触りがマッチしました。ジャガイモやトウモロコシのポタージュなどにも合うと思います。
冷やして提供したい場合は、氷を入れると香りが閉じてしまうため、瓶ごと冷やします。お料理に合わせて4~12度程度に整え、提供することが多いです。これは甘いデザートにもよく合います。チョコレート系のデザートには樽貯蔵したもの、クリーム系やバニラ風味のものには芋焼酎、フルーツ系には米焼酎等が良いですが、組み合わせによって可能性は色々あるように思います。
食の世界に従事する者として、提供する料理や酒について深く理解した上で、常にもう一歩先のトータルな美味しさを追求するパッションを持って仕事をしていきたいですね。
【写真】ペアリングコースも提供しているAn Diにて
大越氏お勧めのペアリングメニュー
【ティーリーフサラダ】に【レモンサワー】
「レモンサワーには芋焼酎も試しましたが、より香りの穏やかな米焼酎の方がレモンの風味を活かすことができ、そうする事でお料理とレモンサワーの風味のハーモニーが生まれます。」
■発酵させた八女茶、もちキビ、ナッツ、桜エビ、河内晩柑、トウモロコシなどに甘夏のソースをかけるサラダ
■皮ごと潰した有機レモンの旨味を米焼酎が引き立てるレモンサワー
【揚げ春巻】に【麦焼酎】
「麦焼酎の香ばしさと、パリッと揚げた皮の香ばしさが引き立て合います。」
■山椒や大葉など和のハーブを効かせた、清涼感のある揚げ春巻き
■香りを楽しむために、小さなグラスに常温ストレート、もしくはトゥワイスアップで提供する麦焼酎
飲料と料理 ペアリングのタイプ
【中和のペアリング】
料理による脂分を酸味で中和したりする感覚。飲料と料理が互いの個性を干渉することで、味わいのバランスをとる方法。
【五味のペアリング】
甘味・酸味・塩味・苦味・旨味の五味を、料理と飲料でバランスよく揃えること。味覚の満足度が高まる。
【同調のペアリング】
飲料と料理の互いの個性の一部を同調させることで、一体感が生まれ、風味も引き立てることができる。
【風味のペアリング】
飲料と料理の香りの方向性を合わせることで、香りの同調感やハーモニーを作り出す。
【テクスチャーのペアリング】
食感に着目し、飲料と料理の柔らかさや温度を合わせることで、味わいの一致を計る。
日本酒造組合中央会
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