世界のソムリエが日本酒のブランド力を高めたように、本格焼酎と泡盛の伝道師として期待されるのが、専門的な知識をもったバーテンダーです。昨年、海外のトップバーテンダーを招聘したツアーが再開し、輸出促進に向けた動きが活況になっています。
バーテンダーが巡る大分、熊本、鹿児島の酒蔵ツアー
コロナ禍の間中断していた蔵元招聘ツアー。日本酒造組合中央会が、海外における本格焼酎と泡盛の認知度を高め、プロモーションにつなげるために、世界のトップバーテンダー7名を招聘。再開した5回めとなるツアーは、2022年10月29日から1週間かけて、福岡から大分、熊本、鹿児島の8か所の酒蔵を巡り、交流を深めました。
世界のバーテンダーたちが語る本格焼酎の可能性とは
ニューヨークにあるBar Gotoのオーナー、ゴトウ・ケンタさんは、日本生まれのアメリカ育ち。2022年のUSベストバーにノミネートされるほか、2022年のUSベストバーにノミネートされるなど、注目のバーテンダーです。
「焼酎は普段から飲んでいますが、焼酎が造られる工程について、実際に足を運んで見学したことがありませんでした。YOUTUBEなどの動画で見るのではなく、実際の現場で見ると、何かパワーを感じます。今回のツアーで、酒蔵の匂い、温度、湿度、音など、すべてを体感できてよかったです。
とりわけ樽の熟成焼酎に関心があったのですが、自分が想像していたよりも多くの蔵がすでに行っていることを知りました。希望通りの樽を簡単に入手できないという現状も。限られた選択肢の中から選んだ樽でも、満足度の高い焼酎を造り出す、酒蔵のみなさんの姿勢に心から尊敬です。
今回、実際に造りを見て一番インパクトに感じたことは、焼酎を造っている人々の情熱です。そしてその情熱から生まれる職人技。加えて、原材料や麹によって味わいが変わること。世界の他のスピリッツに比べて、その変わる幅が大変広いことに驚きました。
焼酎はとても奥の深いスピリッツであるという事実を、もっと海外の人々は知るべきだと思います。さらにハナタレなど高度数の焼酎は、テキーラやメスカルとも肩を並べる存在であってほしいです」。
続いて、世界で最も先進的なバーの1つ“Death&Co”のアレックス氏。ニューヨークをリードする話題のカクテルバー“Death&Co”のオーナーとして、蒸留酒業界に影響力があり、つねに最先端に目を向けていることで定評のあるバーテンダーです。
「製造技術をもっと知りたい、いろいろな種類の焼酎を飲んでみたいというのが、来日の一番の関心でした。焼酎が何であるかは理解しているつもりでしたが、酒蔵を巡ってみて、じつはほとんど何も知らなかったんだと実感しました。
世界の蒸留酒の多くは、ベースとなる原料が共通していて、発酵や蒸留、熟成の方法が似ているのでわかりやすいんです。焼酎はそう簡単に理解できるものではなく、軽快でクリーンなものからファンキーで複雑なものまで、あらゆる焼酎がある。その中から選べることに私は最も興奮を覚えています。バーテンダーとして、このことが自分のクリエイティビティにとってどれほど刺激的であるか!
今回、伝統に忠実な造り手、革新的な造り手、歴史と未来にまたがる造り手など、代々受け継がれてきたものを受け継いでいる人たちに出会いました。焼酎の多様性を探究することはとてもエキサイティングなことですが、何世代にもわたって受け継がれてきた焼酎造りがいかに個人的なものであるか痛感。ファミリーと焼酎がいかに絡み合っているのかに、私は深く感銘を受けました。
アメリカに輸入されている焼酎は日本で生産されている焼酎のごく一部でした。焼酎はもっと複雑は幅広いものであることを知りました。そのことは、蒸留酒のプロとして、長い間失っていた宝物を発見したよう! 実際に酒蔵に訪れることで、全く新しい世界が広がり、すでに次の来日が待ち遠しいです」。
本格焼酎と泡盛は、世界で親しまれる”SHOCHU&AWAMORI”へと踏み出したばかり。招聘ツアーで廻ったバーテンダーたちの活躍をきっかけに、本格焼酎と泡盛の魅力を知る人が増えることが期待されます。
文・神吉佳奈子
日本酒造組合中央会
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