本格焼酎・泡盛が「蒸留酒」であることは広く知られていますが、その蒸留の方法にも種類があることをご存じですか?実は、蒸留の仕方によって味わいが大きく変わります。
そこで今回は、本格焼酎・泡盛の蒸留方法について、分かりやすくご説明します。
2種類の蒸留機、ふたつの蒸留方法
まず、焼酎を造る際に使う蒸留機は、「単式蒸留機(ポットスチル)」と「連続式蒸留機(パテントスチル」の2種類があります。
「連続式蒸留機」は、明治時代にイギリスから輸入されたものです。蒸留機の中で何度も蒸留が行われるため、不純物が少なく純度の高いアルコールを一度に抽出することが可能です。そのため、同じ味わいの焼酎を大量生産できるという特徴があります。
現在では主に、甲類焼酎が造られています。
それに対し本格焼酎・泡盛は、昔ながらの「単式蒸留機」で造られています。これは一度しか蒸留ができないため、大量生産はできません。蒸留機の構造が単純なぶん、原料の風味を生かしたお酒造りができます。
さらに単式蒸留機を使った蒸留方法も、ふたつあります。
それが「常圧蒸留」と「減圧蒸留」です。
あまりなじみのない言葉だと思いますが、蒸留方法の違いがそれぞれの銘柄の味わいに関係していることを知ると、選ぶ時間がもっと楽しくなりますよ。
常圧蒸留とは
これは500年の歴史がある伝統的な造り方で、蒸留機の中のもろみに蒸気を当て、90~100℃になるまで加熱する方法です。
常圧蒸留は原料本来の風味を引き出す
常圧蒸留は、原料の旨味やコク、風味をしっかりと残せるのが特徴です。
昔ながらの伝統的な製法として、九州地方を中心に広く用いられています。その理由は、
原料のよさを十分に引き出した個性的で風味豊かな本格焼酎を造ることが可能だからです。
常圧蒸留で造られるお酒は?
芋焼酎の多くが、常圧蒸留で造られています。
また貯蔵したときの熟成効果が高いため、泡盛や古酒(長期熟成酒)も常圧蒸留です。
本格焼酎と同じく代表的な蒸留酒であるモルトウイスキーも、常圧蒸留で造られ、熟成されています。
減圧蒸留とは
減圧蒸留とは、蒸留機内の空気を抜くことで気圧を下げ、40~50度の低い温度で蒸留させる方法です。
ここで覚えておきたいのは、伝統的な常圧蒸留に対し、1970年代から普及した新しい蒸留方法だということ。この技術のおかげで、本格焼酎が九州地方だけにとどまらず、日本中で気軽に飲めるようになりました。
また、低い温度で素早く蒸留できるというメリットも持っています。
減圧蒸留は淡麗でソフトな味わい
もろみを低い温度で沸騰させるため、常圧蒸留に比べて蒸留中にもろみが高温にならず、加熱処理したような香気成分が少なくなります。そのため、ソフトでやさしい香りに仕上がり、雑味が少なく、すっきりした味わいの本格焼酎ができあがります。
減圧蒸留で造られるお酒は?
ソフトで軽い飲み口の本格焼酎ができる減圧蒸留では、主に麦焼酎・米焼酎が造られています。
とはいえ、減圧蒸留で造られた芋焼酎の銘柄もあります。芋の風味を残しながらも「軽く・すっきり」とした口当たりの芋焼酎にめぐり合ったら、蒸留方法を確認してみてください。
奥深い本格焼酎の世界を楽しもう!
同じ原料を使った本格焼酎・泡盛でも、蒸留方法の違いで異なる味わいが楽しめることが分かりました。
また、常圧蒸留と減圧蒸留のそれぞれのよさを引き出し、うまくブレンドした本格焼酎もありますし、減圧加減を調整した「微減圧蒸留」という方法を採用している酒造もあります。
「おいしい焼酎を造りたい」という酒造のこだわりや、原料の特徴を一番生かせる方法で造られている本格焼酎・泡盛。
せっかくいろいろな銘柄の本格焼酎を飲むのなら、蒸留方法に違いがあることを知って、飲み比べをしてみてはいかがでしょうか。
おわりに
本格焼酎のラベルには蒸留方法が記載してあることも多いため、次回からはぜひ確認をしてみてください。ほんの少しの専門知識を知っておくだけで、お酒の楽しみがぐんと広がります。
そして、あなた好みの製法や銘柄を探してみてくださいね。
日本酒造組合中央会
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