「米を主原料とした焼酎」には、米焼酎、粕取焼酎、泡盛の三種類があります。その米焼酎の中でも、代表的なものが熊本県球磨地方の名産である、球磨焼酎です。今回は、そんな球磨焼酎の歴史と、球磨焼酎の発展に大きく関わった郷土料理についてご紹介いたします。
球磨焼酎とは
米焼酎は、九州の中でも余剰米が収穫できた地域で作られてきました。その代表ともいえる球磨焼酎は、「球磨の水を使い、球磨で造り、球磨で蒸留、瓶詰めされた米焼酎」を指します。
具体的な工程は、以下の通りです。
まずは「洗米」。そして、「浸漬」したあと、「蒸し」の作業。次に、「麹菌の種付け」を行います。これらの工程を終えると、「一次仕込み(麹+培養酵母+水で熟成→一次醪)」、さらに、「二次仕込み(蒸米+一次醪+水で発酵)」。そして「蒸留」し、「貯蔵熟成」。
球磨焼酎は、世界貿易機構(WTO)の加盟国が保護するGI(地理的表示)指定を受けた、世界が認めたブランドとなっています。すなわち同じく地理的表示の産地指定を受け、地名を冠しているウィスキーのスコッチ、またブランデーのコニャック、ワインのボルドーなどと肩を並べる酒なのです。
球磨焼酎における4つのタイプ
球磨焼酎には4つのタイプが存在します。
まず、「香り高く華やかな味わい(香華)」を楽しむフレーバータイプ。果物や華のような香りが特徴で味わいは爽快なものが多いです。
次に、「香り穏やかな軽快な味わい(淡麗)」を楽しむライトタイプ。どんな飲み方でもスッキリ味わうことができます。
そして、「香り深く重厚な味わい(濃醇)」を楽しむリッチタイプ。こちらはコク、がキーワードとなっているのでしっかり焼酎を味わいときにオンザロックで飲んでみてください。
最後に、「香り高く濃厚な味わい(樽熟成)」を楽しむキャラクタータイプ。特別な手法、または熟成させたものを指し、個性的な焼酎となっています。
ぜひ、球磨焼酎を選ぶ際に参考にしてみてください。
十万石の国「球磨」
球磨は小国ではありましたが、実質十万石の国といわれていました。球磨川では、アユ、ヤマメ、ウナギが採れました。また、豊かな自然からは山菜やイチゴ、桃なども収穫することができました。そのほかには、球磨牛や鹿、猪などにも恵まれた食大国でありました。
このような環境で育まれた球磨焼酎は、16世紀前半から作られていたと考えられています。1546年、鹿児島県山川港に滞在していたポルトガルの商人、ジョルジュ・アルバレスがフランシスコ・ザビエルに向けて書いた報告書に、米焼酎に関する以下のような記述があります。
「米からつくられるORAQUA(オラーカ:蒸留酒の意味)を老いも若きも皆飲んでいる」。すなわち、老若男女が好んで米焼酎を飲んでいた、と考えられます。しかし江戸時代、米を原料とする米焼酎は庶民には手の届かないような、非常に高価なものでありました。実際のところは定かではありませんが、米焼酎、また球磨焼酎を飲むことができていたのは限られた人々であったのかもしれませんね。
郷土料理との関わり
そして球磨は、前述したように食に恵まれた豊かな環境であったため汁物や郷土料理が盛んな国でした。
球磨で一番有名な郷土料理は何か、というとやはり「球磨だご汁」を挙げることになるでしょう。平たい小麦粉の団子、いわゆる「だご」を人参、里芋、豚肉などと共にみそや醤油のだし汁で煮込む家庭料理です。こういった料理と共に球磨焼酎の歴史は広まっていったといえるでしょう。
おわりに
さて、いかがでしたでしょうか。球磨焼酎の4つのタイプ、また球磨焼酎を生み出した球磨という国について、さらには郷土料理についてもご紹介しました。球磨焼酎を飲むとき、これらの背景に浸りながら飲むとまた感慨があるというものです。ぜひ参考にしてみてくださいね。
出典:本格焼酎&泡盛プレス 2013年5月号No.99/2013年5月号No.99/2009年7月号No.76+9月号No.77
日本酒造組合中央会
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