虎ノ門蒸留所の蒸留家、一場鉄平さんが営む小料理と蒸留酒の店「かまびす」。「蒸留酒をもっと日常に」という思いではじめた酒場の料理が、ジンや本格焼酎にすこぶる合うと評判をよんでいます。料理を担当するのは女将のもみさん。ハーブ、スパイス、発酵食をとりいれた人気のおつまみを紹介します。
微生物たちが発酵するように、にぎやかで楽しい酒場に
「味噌の〝噌〟は、かまびすいと読んで、騒がしいという意味。微生物たちがワイワイと発酵するように、にぎやかで何かおいしいものが生まれるようにと名づけました」と一場さん。お品書きに並ぶのは、なんこつソーキと発酵白菜の煮込み、遊牧民の納豆春巻、むちむちの肉団子の月桃の葉むし・・・・・・料理名を眺めるだけ楽しく、酒呑みは〝かまびすい〟となってきます。
女将のもみさんが蒸留酒に合うようにと心がけているのは、和食ベースではあるけれど和食にしないこと。発酵食、ハーブ、スパイスを和食にうまくとりいれたエスニックなテイストが、お箸やお酒が止まらない無限おつまみとして、評判をよんでいます。
蒸留酒のおつまみは、ハーブ、スパイス、発酵食がキーワード
この日の小さなおつまみは、スパイスらっきょう、いちじくばたー、青唐明太子、ぬか漬け、自家製キムチ、そして人気ナンバーワンの「白身魚の発酵白和え」(各500円)。
酒粕とクリームチーズを練り上げた衣で白身魚を和え、砕いた黒豆を散らした、ちょっと小粋なおつまみ。酒粕の風味に濃厚なクリームチーズがほどよく練りこまれ、カリカリッとした黒豆の香ばしさがアクセントになっています。これに合わせたのが、東京の島焼酎。「情け嶋」の酵素シロップサワーのすっきりした飲み心地が相性抜群!
旬のフルーツを使った酵素シロップを蒸留酒の割り材に
カウンターには一場さんが造る虎ノ門蒸留所の「コモンジン」が並んでいますが、日本各地のクラフトジンのほか、約20種類の本格焼酎と泡盛を取り揃えています。
旬の果物で作った酵素シロップで割り、ソーダアップした酵素サワーも人気。「情け嶋」をパープルクイーンの酵素シロップで割った酵素サワーは、麦焼酎の軽やかな飲み心地に甘酸っぱいフレーバーがプラスされて、爽やかな一杯に。
「遊牧民の納豆春巻」(800円)もリピーターの多い人気の一品。ラムの挽き肉と納豆というとクセの強い具材をクミンとナツメグがつなぐ、スパイシーなおつまみです。かぶりつくと、スパイスの香りがふわりと口の中に広がり、エキゾチック。パンチのあるおつまみには、伊豆大島の「御神火 凪海」(900円)をロックで。島の名物、クサヤと合うというだけあって、クセの強いものを受け止める大らかな味わい。べっこう飴のような香ばしく甘みのある香味が後を引きます。
焼酎の造り手の今を伝えていきたい
「蒸留酒をもっと日常に」という思いで立ち上げた酒場ですが、焼酎のおいしさを知っている人はまだまだ少ないと一場さん。クラフトジンの人気はボタニカルな香り。これまでジンに親しんでいなかった若い世代の間で、植物由来のさまざまな香りが人気となっています。
「でも、年配の方の中にはジンは薬みたいで臭いと思っている人がいまだにいます。焼酎はその逆で、焼酎の匂いが苦手と思っている若い人が多いですね」
2021年、一場さんはジンの造り手と宮崎や鹿児島の酒蔵を巡り、自分と同世代の造り手たちと出会い、ますます焼酎がおもしろいと思うようになったと言います。
「一番驚いたのは、天狗櫻の白石さん。自分で栽培した無農薬の芋を蔵付き酵母で醸したナチュラルな芋焼酎を造っています。黒木さんの山ねこは、ジョイホワイトと酒米の山田錦を使って木桶で発酵、ライチのような華やかなフレーバーはジン好きにも人気です。大和桜の若松さんは春眠不覚暁というネーミングで、柑橘のへべすをかじってから芋焼酎を飲むという面白い提案をしています」
焼酎のフレーバーは、芋や麦などの原材料のほか、麹の造り方や造り手の技によって生まれたもの。今までの焼酎のイメージを覆すような、ライチやオレンジ、花のようなフレーバーのものが次々と登場しています。
「自分たちのジンを通して、まだまだ知られていない焼酎のおもしろさを伝えていきたいですね」と語る一場さんおすすめの一杯と発酵おつまみを楽しめば、両方の虜になること間違いなし。かまびすのカウンターは、楽しい驚きと楽しさにあふれています。
かまびす
東京都江東区深川1-8-12
パーソナルハイツ門前仲町
17:00~22:00
定休日: 月曜、隔週日曜
予約はInstagramのDMへ
●焼酎600円~、ジン900円~、焼酎の酵素サワー割り1300円ほか。
https://www.instagram.com/kamabisusii/
撮影・名取和久 取材・神吉佳奈子
日本酒造組合中央会
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