1. 株式会社 正春酒造(宮崎県)|逢初

  2. 常楽酒造株式会社(熊本県)|秋の露 蔵のこだわり

  3. 大島酒造株式会社(長崎県)|磨き大島

  4. 太田酒造株式会社(滋賀県)|単式焼酎 琵琶之誉 金時芋

  5. 松の泉酒造合資会社(熊本県)|吟醸酵母仕込 水鏡無私

  6. 姫泉酒造合資会社(宮崎県)|本格芋焼酎 無濾過御幣~紅雲~25度720ml

  7. 有限会社 渡辺酒造店(岐阜県)|わたなべ35

  8. 鷹正宗株式会社(福岡県)|本格麦焼酎(長期貯蔵) 筑紫の坊主

  9. 有限会社 山の守酒造場(長崎県)|山乃守

  10. 合資会社光武酒造場(佐賀県)|芋焼酎 お前はもう死んでいる

  11. 古澤酒造株式会社(山形県)|雪原 極上米焼酎

  12. 株式会社 宮本酒造店(石川県)|本格加賀丸いも焼酎 のみよし

  1. 飲めるお店紹介

  2. 蕎麦

  3. 居酒屋

  4. Bar

  5. 寿司・刺身

  6. 焼肉

  7. 日本料理

  8. 焼き鳥

  9. すき焼き

雑学

日本の島々の様々な表情を伝え続ける斎藤潤さん「来島者を迎え入れ、島人の絆を結び繋げる島酒」

日本全国の有人離島は約420島。定期航路のない島々も含め、ほぼ全ての国内離島を訪ね歩いたという斎藤潤さんに、島々で出会った本格焼酎・泡盛の魅力について話を聞きました。

【写真】喜界島のガジュマル巨木の前で

 

【斎藤潤さんプロフィール】

1954年岩手県生まれ。ライター。東京大学文学部露文学科卒業。旅行情報誌の編集に携わったのち、フリーランスに。全国をめぐり、旅、島、食、自然、農林水産業などをテーマに執筆活動を行う。『日本《島旅》紀行』『沖縄・奄美《島旅》紀行』『瀬戸内海島旅入門』『ニッポン島遺産』など著書多数。

 

 

 

 

 

島酒で刻印される島の想い出

学生時代から旅が好きで、アルバイトで資金を貯めて全国各地をめぐっていました。大学卒業後は旅行情報誌の編集部に勤め、地方出張に合わせて近くの島を訪ねるようになりました。東北生まれですが、若い頃から酒は焼酎・泡盛派。旅をする中で、いろいろな島酒との出会いがありました。

【写真】喜界島のライブハウスで黒糖焼酎を傾ける

 

 

 

 

島を離れていても、島酒の香りを嗅ぐと、その土地の情景や想い出が蘇ってきます。大切にとっておいた古酒を味わいながら、今はなき名杜氏の在りし日の姿に思いを馳せることもあります。

【写真】奄美大島・名瀬の小料理屋で島唄を堪能

 

 

 

 

 

 

 

40年ほど前、上甑島(かみこしきじま/鹿児島県)に日本一安いユースホステルがあり、1泊100円で滞在しました。風呂は薪を拾ってきてお湯を沸かす五右衛門風呂、地元の漁師さんを手伝って魚をもらったり海藻を採ったりと、ほとんどお金を使わない生活の中、一番の贅沢が晩酌の焼酎でした。宿泊客同士でお金を出し合い、上甑島に1軒だけある焼酎蔵の芋焼酎を買って飲みました。とても美味しかった。今は全国的に人気の銘柄になっていますね。

同じ頃、麦焼酎発祥の島・壱岐島(いきのしま/長崎県)へ麦焼酎の蔵を訪ね、壱岐焼酎に出会いました。甲類焼酎に比べて格段に味が濃く、島でとれるウニや郷土料理とよく合いました。その美味しさに感動して「焼酎の島なんだなぁ」と実感したことも覚えています。

【写真】貯蔵される壱岐焼酎

内なる異郷沖縄・奄美群島

1972年に沖縄が日本復帰し、1974年に訪れた離島の民宿では、泡盛をサービスで出してくれて、気前よくいくらでも飲ませてくれました。夜になると宿の主人が三線を爪弾き、踊り上手の女将が島の踊りを披露し、同宿の人たちと毎晩遅くまで飲んでいましたが、ヤマトからの旅行者が泡盛を喜ぶ一方、当時の沖縄の学生はウイスキーを好み、シマー(泡盛)を馬鹿にしていたのが印象的でした。

【写真】那覇市の沖縄県酒造組合前にある、坂口謹一朗教授の泡盛を讃えた石碑

 

 

 

 

やっぱり島に行ったら地元の酒を飲むのが楽しい。日本で唯一黒糖焼酎の製造が許されている奄美群島(あまみぐんとう/鹿児島県)では、酒といえば黒糖焼酎のこと。名瀬の小料理屋かずみの西和美さんのように全国的にも有名な唄者が、興が乗るとサービスで素晴らしい歌声を聞かせてくれるのは、島の生活と酒が切り離せないからこそだと思います。日本復帰前の奄美では、物資の少ない中で雑穀を使った焼酎や、救荒作物として植えられたソテツの実などを使ってソテツ酒が造られていたという話も聞きました。

【写真】奄美大島に広がるサトウキビ畑

 

青ヶ島の焼酎造りは島酒の原点

そんな地酒の代表格といえば、10人の杜氏がいる青ヶ島(東京都)の焼酎ではないでしょうか。元々は自家用に造られていた焼酎の姿を今に伝えていて、飲み比べると造り手が分かってしまうほど酒の味に個性が現れる。興味を惹かれ、取材もしました。

島で飲んだ焼酎のハナタレ(初留)は、度数も60度と強く、脂がこってりとして活力がみなぎるような味でした。熟成させると、円やかになり複雑な香りが出てきます。島の方によれば、美味しく熟成させるにはお墓に入れるのがベストとのことで、与那国島(よなぐにじま/沖縄県)の花酒にも似た風習がありますが、埋葬の際にお墓に入れて10年後に改葬するまで寝かせておく。涼しくて温度が一定なことと、飲みたくなっても簡単に取り出せないから都合が良いのだとか(笑)。

 

 

青ヶ島の焼酎造り

【写真】葉で伏せて3日目。菌糸が見えてきた。(黄麹を主に使用)

「蒸して冷ました麦は、オオタニワタリ(またはアジサイ)の葉を敷き詰めた箱に広げ、その上をさらにオオタニワタリで覆う。」「翌日には(自然の)酵母の黴が生じてくるので、揉みほぐしてやる。2、3日すると熱をもってくるが、もちすぎるとべちゃべちゃになってしまうので、温度管理が重要だ。」(斎藤氏著書『東京の島』より抜粋)

 

 

【写真】 発酵しはじめた醪。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【写真】 ほぼ発酵が終わった醪。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【写真】 発酵を促す撹拌作業の櫂入れ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

島人の生活に生きる島酒

本来、酒を造ることは人の生活の一部で、酒は行事や祭りなどにも欠かせないものでした。竹富島(たけとみじま/沖縄県)の種子取祭では、神様への奉納芸が終わってから、何組かに分かれ一晩中各家々を回ってタコとニンニクを肴に泡盛を飲み、家々の庭で巻き踊りをしていたのが印象的でした。

伊平屋島(いへやじま/沖縄県)でお会いした造り手が、「島の人たちのために造り続けたい」と話したのが心に残っています。島の人たちも、那覇で色々なお酒を楽しむこともある一方、神事などの際は「やっぱり島の酒じゃないとな」となる。主に島内消費のために造り続けているような、波照間島(はてるまじま/沖縄県)や伊是名島(沖縄県)などの泡盛も、そうした精神を体現していると思います。

宿のないような島に行って、地元の方のお宅にお世話になることもありますが、夜に人が集まって始まる飲み会が楽しい。際限なく話をしながら、言いたいことを言い合って酒を飲む。島の日常に欠かせない時間なんです。

歩いて島を回ると、すれ違う方と立ち話もしやすいし、地元の方々とお酒を酌み交わすと、人柄や土地柄も見えやすい。その土地がぐっと身近に感じられますよ。

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