本格焼酎をもっとカジュアルに、もっと楽しく! 東京・浅草で大城アンドレアさんが焼酎ビギナーに向けて仕掛けたのは、ピスコと焼酎を発信するスタンドバー「どんまるてぃん」。「大好きな焼酎のことを若い世代に伝えたい、知ってもらいたい」。そう考えたアンドレアさんが着目したのは、ルーツであるペルーの蒸留酒、ピスコでした。ミラーボールがキラキラ回る店内でラテンポップスを聞きながら、立ち飲みで楽しむピスコと焼酎。お酒のカルチャーがクロスする発信基地として人気スポットになっています。
南米で人気の蒸留酒、ピスコと本格焼酎を並べる理由
とにかく陽気でフレンドリー。アンドレアさんがカウンターに立つだけで店はアットホームに、初めて訪れるひとり客をたちまちに和ませてくれます。楽しいお酒の場がなにより好きだというアンドレアさんは、来日して日本の本格焼酎に出会い、すっかり魅了され、焼酎伝道師の道へ進みます。「自分と同世代の若い人たちが焼酎と出会えないなんてもったいない!」と一念発起。焼酎バーを開こうと考えていたところ、家族と一緒に飲んでいたピスコを思い出し、「わたしが東京で店を開くなら、ピスコと焼酎の店にしなくちゃ」と思ったといいます。
ペルー原産のピスコの原料はぶどう。ぶどうの品種は8種類あり、その発酵液を単式蒸留器で1度だけ蒸留した、アルコール度数38度~48度の蒸留酒です。ピスコも本格焼酎も一回蒸留。芋焼酎が品種によってフレーバーが違うように、ピスコも原料ごとの個性を引き出して造ります。
「ピスコと焼酎、知れば知るほど造り方もカルチャーも似ているんです。ピスコが好きな人はきっと焼酎も好きになる。だから、日本とペルーの架け橋になるようなバーにしようと決めました。焼酎バーより、ピスコと焼酎のバーのほうがおもしろいでしょ」
店名の由来はアンドレアさんの父、マルティンさんの名前から、店の看板のモデルにもなっています。オープンから4月で1年。日本ではまだあまり知られていないピスコが飲めるとあって、ピスコに興味をもって訪れるお客さんは8割。「ピスコを飲みに来る人が多いんですけど、焼酎はピスコと似ているんですよとお話すると、みなさん興味もってくれます。今日は焼酎をと2回目に訪れる方が多くて、そういう人が増えています」。
ピスコはフルーティーなタイプと、ドライなタイプに分かれています。「トロンテル」などフルーティーなピスコが好きな人には「つるし八千代伝」や「フラミンゴ」の香りのある芋焼酎を、「ケブランタ」などドライなピスコが好きな人には、「やきいも黒瀬」の飲みごたえのある芋焼酎を。アンドレアさんはお客さんの好みを聞きながら、ピスコを飲みに来た人には焼酎を、焼酎を飲みに来た人にはピスコをすすめているといいます。
お酒好きが高じて、本格焼酎と出会い、武者修行の旅へ
小学校まで日本で暮らしていたアンドレアさんが再び来日したのは、23歳のとき。デザイナーとして働きながら、好きが高じてお酒の勉強をしようと居酒屋を探した先が、焼酎居酒屋でした。焼酎のことどころか、お酒のことがさっぱりわからなくて途方に暮れていたといいます。
「お客さんに味わいをきかれても、どうやって説明していいかわからない。おいしい以外のことばが見つからなくて、舌がピリピリするくらいしか言えなかったんです(笑)」。味わいが伝えられないかわりに、酒蔵のストーリーや造り手のことをひたすら調べては、なんとか伝えていたというアンドレアさん。
焼酎居酒屋で働きはじめて1年目の2019年、ついに武者修行の旅へ。鹿児島の八千代伝酒造、万膳酒造、佐藤酒造、宮崎の柳田酒造をかけ巡り、焼酎カルチャーを体感。造り手の考え方や造り方によって味わいが違い、それぞれに個性があるということを知ります。
造り手の情熱に触れて火がついたアンドレアさんは、それから焼酎伝道師の道へまっしぐら。2022年に「どんまるてぃん」を開業してからは、造り手と交流を続ける中で感じた焼酎の個性を、焼酎を知らない人にも興味をもってもらえるよう、味わいだけでなく、楽しく伝わるように心掛けているといいます。
お気に入りの高良酒造の「八幡」をおすすめするときは、「どんなこといってもぶれない芯のある人。一緒にいるとほっとするおじさんみたいな芋焼酎」。柳田酒造の「青鹿毛」はちょっととがった人で、「赤鹿毛」はマイルドなお兄ちゃん。「どちらも愛想をふりまくわけじゃないけど、根強いファンがついてる人みたいな麦焼酎」。アンドレアさんの焼酎にかける愛情が伝わってきます。
「どんまるてぃん」のお湯割りは、鹿児島・佐藤酒造の佐藤寿峻(としたか)さん直伝。
「お湯は熱すぎないこと。湯沸かしポットを85度に設定してコップに注いだら、とにかく丁寧に焼酎を注ぐことが肝心」と、酒蔵で教えてもらったことを忠実に再現しています。
「一升瓶を片手で持ってゆっくり円を描くように注ぐのが難しくて。コーヒーポットに焼酎を入れて、コップに注ぐように工夫しています」
ピスコ好きにも人気なのが、ペルーレモンを使った「どんまるサワー」。ビター感のある麦焼酎「青鹿毛」や「情け島麦冠」でつくると、少し大人の味のレモンサワーに。フライドポテトとソーセージにケチャップとピリ辛ソースをつけながら食べる南米の屋台料理「サルチパパ」をつまめば、ラテンな気分も盛り上がります。
「ピスコはペルーを背負っているような使命感、焼酎は愛です!」。ペルーと日本、そしてピスコと焼酎をつなげる架け橋のようなスタンディングバー。「どんまるてぃん」で焼酎の新たな扉を開いてみませんか?
どんまるてぃん
東京都台東区浅草1-41-5
03-6802-7708
18:00~24:00
日曜18:00~22:00
定休日 月曜日 不定休あり
●ペルーレモンサワー780円、ピスコ780円、焼酎前割り680円ほか。
https://donmartin.tokyo/
撮影・名取和久 取材・神吉佳奈子
日本酒造組合中央会
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