日本の酒情報館にて開催された本格焼酎・泡盛とクラフトコーラの相性を探るワークショップ。本格焼酎・泡盛に精通する面々と、クラフトコーラに精通する面々が会し、とくに印象に残った組み合わせをここに発表! そこから憶測される理由を、日本酒造組合中央会の理事・宇都宮仁さんが解説します。
クラフトコーラをテイスティングし、合いそうな本格焼酎・泡盛を飲み合わせる
今回の検証に集まったメンバーは、クラフトコーラ界を牽引するメディア「クラフトコーラウェーブ」編集長・鯉淵正行さん。世界初のクラフトコーラの造り手「伊良(いよし)コーラ」小林隆英さん。焼酎コーラ割りを提供している飲食店「IGOR COSY 渋谷本店」店長・山田敬一朗さんたち。本格焼酎・泡盛に精通するメンバーに、「日本の酒情報館」の館長・今田周三さんや日本酒造組合中央会理事・宇都宮仁さんなどが参加しました。
いざ、検証。手順は、まずクラフトコーラ7種を試飲。合いそうな本格焼酎・泡盛を予想し、実際に飲み合わせてみるという方法を取りました。
クラフトコーラは、個性は違うものの「一様においしい」というのが参加メンバーの感想。どの本格焼酎・泡盛を合わせても合いそうですが、意外にもイメージしたほど相乗しなかったものと、爆発的に相乗するものがありました。
とくに印象に残った組み合わせ3組と考えられる理由
黙々と飲み合わせること数十分。参加メンバーが挙げた、とくに印象に残った組み合わせ3組を紹介します。
芋焼酎・赤薩摩×YASO COLA
■赤薩摩 薩摩酒造・鹿児島
南薩摩の頴娃地区で栽培されるアントシアニンを豊富に含む希少なサツマイモ「エイムサキ」を原料に黒瀬杜氏から受け継いだ技で仕込んだ、華やかな香りと余韻の残る旨味が特徴。
■YASO COLA 越後薬草・新潟
国産レモン、シナモン、カルダモン、クローブなどの植物に80種類の野草を中心とした原料からできた植物発酵エキスと粉末をプラスしたクラフトコーラシロップ。
■解説
「原料の紫芋特有のジアセチルを多く含む赤薩摩は、単体で飲むとヨーグルト感が強いけれど、YASO COLAのソーダ割りを混ぜると複雑味が出てきました。味わいが軽やかで香りもいい。柔らかな飲み口の印象です」(宇都宮)
芋焼酎・赤薩摩×YASO COLA
■白岳 吟麗しろ 高橋酒造・熊本
日本酒の吟醸酒のような華やかな香りと軽やかな口当たり。そして透明感のあるすっきりとした味わいの淡麗タイプ。
■伊良コーラ 伊良コーラ・東京
漢方職人・伊東良太郎の孫である伊良コーラ代表、コーラ小林が、祖父から受け継いだ漢方の製法とクラフツマンシップを基に生み出した、缶のクラフトコーラ。100年以上前のオリジナルコーラレシピをもとに、コーラの実をはじめとするスパイスや柑橘類、生薬をふんだんに用いている。
■解説
「米焼酎とコーラは意外な組み合わせですが、相補的な効果がありました。互いに似た香りがあるのではなく、吟醸しろが持つカプロン酸エチル由来のパイナップルに似た華やかなな吟醸香と、伊良コーラが持つカルダモンの香りが合わさり、淡いグリーンや白をイメージさせる爽快なフレーバーが広がります」(宇都宮)
泡盛・久米島の久米仙 ブラック5年古酒×TOBA TOBA COLA
■泡盛・久米島の久米仙 ブラック5年古酒40度 久米島の久米仙・沖縄
黒麹を用いた米麹を原料に伝統の製法で造り、5年寝かせた古酒。上品で豊かな香りと濃醇な飲み口。コク、風味とも味わい深い。
■TOBA TOBA COLA KEITHLAND・鹿児島喜界島
きび粗糖、フードロスの在来種島みかん、14種のスパイスを調合した無添加・無着色のクラフトコーラシロップ。珊瑚礁の島、喜界島で夫婦で限定製造している。
■解説
「久米島の久米仙が持つバニリン由来の甘い香りと飲みごたえを生む油分が、TOBA TOBA COLAと合わせることによって締まりが出た印象。コーラの持つスパイスや柑橘の香りと違う方向に引き上げてくれる感じがします」(宇都宮)
本格焼酎・泡盛×クラフトコーラの酸味と甘味の相乗が美味を生む
ワークショップを終えて、クラフトコーラのメンバーからこんなコメントが得られました。
「弊社ではすでに“伊良コーラ酎”という、大山甚七商店の芋焼酎に伊良コーラのスパイスと柑橘を浸漬して蒸留した商品を開発しています。相性のよさはわかっていましたが、今回あらためて実感。芋焼酎とクラフトコーラの相性のよさをお互いにどんどん発信できたらいいなと思ってます」(「伊良コーラ」代表・小林隆英)
「僕はお酒が苦手なのですが、合わせることでこんなに飲みやすくなるんだと実感しました。僕の立場からすれば、クラフトコーラを通して焼酎を味わえる体験でした」(「クラフトコーラウェーブ」編集長・鯉淵正行)
「クラフトコーラ自体がおいしいので、焼酎を合わせたときに普通においしい以上の組み合わせを探らなくては。焼酎がこれだけ多彩な香りをもっているのだから、香りをもっと探究して焼酎を生かす術を見つけたいですね」(「IGOR COSY 渋谷本店」店長・山田敬一朗さん)
締めくくりに宇都宮さんはこう語ります。
「クラフトコーラがもつ酸味と甘味、スパイスの香りは、本格焼酎・泡盛単体にはない要素。合わさることで味を補完し、複雑味を生み、おいしさへとつながりました。逆に合わないと感じたものは、どちらかの味が強すぎてバランスが悪くなったものでした。また、コーラを使うことでアルコール分は下がっているのですが、味のバランスはさらによく感じられました。副材料を合わせる基本は『似たフレーバーを合わせること』にありますが、そのセオリーの範疇を超えたものを見つけることができ、クラフトコーラのみなさんといっしょに検証した甲斐がありました。」
今回の検証で、ラムやジンとも違う本格焼酎・泡盛ならではのフレーバーの相乗があることが感じられました。「コーラ」という名称と味わいは、世界に通じる共通言語。本格焼酎・泡盛を世界に打ち出す強力なアイテムとなる可能性を秘めています。まだまだ検証の余地はありそうです。
クラフトコーラウェーブ
https://craftcolawave.com/
(クレジット)
取材・沼由美子 撮影・松田大成
日本酒造組合中央会
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