11月1日は「本格焼酎&泡盛の日」だということを知っていますか? 毎年8~9月頃から始まる焼酎の仕込み。その年の本格焼酎ヌーボー、縁起のよい新酒が飲めるようになるのが11月1日前後だということから、1987年に制定されました。11月2日、日本の酒情報館では「本格焼酎&泡盛の日」を祝い、新酒を味わいながら出張料理人ソウダ・ルアさんのパフォーマンスを楽しむ、新焼酎ナイトを開催。盛り上がりを見せたイベントの模様をレポートします。
1回蒸留の本格焼酎だからこそ楽しめるできたての香り
居酒屋で日本酒のしぼりたてや新酒と出会うことがあっても、新焼酎はまだまだ知られざる世界。個性際立つ香りの焼酎が次々と登場する百花繚乱の時代、新焼酎もバラエティな品揃えになってきました。利き酒体験をする前に、日本の酒情報館の今田館長に新焼酎についてお話をお聞きしました。
「蒸留酒は、基本的に寝かせて飲むものです。3年、5年、10年と熟成させることで味わいも価値も上がるウィスキーのことはみなさんご存知ですよね。本格焼酎と泡盛も同じように寝かせておいしくなる要素があり、熟成酒を味わう文化があります。とりわけ泡盛。3年以上寝かせた泡盛の古酒はクースと呼ばれ、寝かせた年数が増えるほど価値が上がり、できたてのときには考えられないような香味が生まれます」。
熟成して飲むのが当たり前の蒸留酒の世界で、蒸留したばかりのできたての新酒も楽しめるのはなぜでしょう。
「本格焼酎が世界の蒸留酒と違う大きな特徴は、蒸留を1回しかしないこと。たとえばウィスキーは2度、3度と蒸留しますし、ウオッカは連続蒸留することで100度近いアルコール度数を出します。本格焼酎は蒸留を1回しかしないのに、50度に近いアルコール度数が出せるのは、焼酎のベースとなる〝麹〟を使うからなんです。
ワインなど世界の醸造酒と比べると、日本酒はアルコール度数が高い醸造酒。高アルコールの酒が醸造できるのは、麹を使った並行複発酵という日本独自の技術によるものです。本格焼酎と泡盛は、日本酒を造る技術で醸造してから蒸留するため、何回も蒸留しなくても50度に近いアルコール度数に達成することができるのです。それが本格焼酎と泡盛、日本の蒸留酒なんです」。
芋焼酎は、その年にできた芋の香りや味わいを堪能
蒸留を何回も重ねる世界の蒸留酒と、1回しか蒸留しない本格焼酎。そこに香りの違いがあると聞くと、がぜん興味がわいてきて、飲みたくなります。
「本格焼酎は一回蒸留だからこそ、原材料の風味がそのままストレートに出ます。香りを嗅げば芋焼酎だったら芋の香り、麦焼酎だったら麦の香りと、原材料に何を使っているのかたいていわかりますよね。
その中でも芋焼酎の香りは一番多様性があり、華やかな香りが特徴。香りが一番強いといってもいいかもしれません。そして、芋焼酎の香りのボリュームが一番あるのが新酒のとき。寝かせるとアルコールは柔らかく口当たりもまろやかになりますが、最初に嗅いだ芋の香りは薄らいでいきます」。
新酒の芋焼酎は、その年毎に違う芋の特徴を感じ、その年の香りや味わいが堪能できる、この季節だけの限定品というわけ。新酒といえば芋焼酎。これはぜひおさえておきたいですね。
濁っているのは、蒸留したてに浮遊する米麹由来の油成分
カウンターに並んだ新酒の中には濁っているものがあります。濁り方も白濁しているものや薄濁りなどさまざま。焼酎がなぜ濁っているのでしょう。
「濁っているのは、濾過をしない造り方によるものです。芋焼酎の原材料は芋と米麹。この米麹由来の油成分がじつは焼酎の中にたくさん含まれているんです。その油成分は酸化すると嫌な香りに変化しやすいので、通常は蒸留後に濾過をしてできるだけ取り除きます。長期保存しても品質が変わらないように、綺麗に澄んだ状態にしてから出荷するのです。
白濁しているタイプは、できたてを味わうことを前提に造っているので、濾過をほとんどしていない造り方。油成分は旨味でもあるので、新酒ならではの香りと旨味をダイレクトに感じてほしいという造り手の考えがあらわれています。同じ銘柄を飲み比べていただくと、新酒の香りが全く違うのがわかるはずです」。
今年できた焼酎を祝い、荒々しい旨さを味わう
最近はいろんなスタイルや考え方で挑戦をはじめる新酒が次々と登場。この日のために今田館長が鹿児島と宮崎から集めた芋焼酎の新酒は25種類! さあ、今田館長のお話を聞いたあとは、お楽しみの利き酒タイムです。
注がれたカップに鼻を近づけると、漬物のような発酵由来の香りや、ツーンとくるガス臭のような香ばしさがあったりと、初体験の参加者から驚きの声があちこちから。じっくり味わっていくと、蒸留したての芋焼酎の荒々しさの中にさつまいもの甘さもしっかり。1本め、2本めと利き酒していくうちにいつのまにか、すっかりクセのある香りにはまっていく人が続出でした。
利き酒をして本格焼酎の新しい扉が開けたところで、新焼酎に合わせて大地を感じるフードを提供いただく出張料理人のソウダ・ルアさんが登場。パフォーマンスの様子は次回ご紹介します。
日本の酒情報館で、11月30日まで新酒の有料試飲あり!
日本の酒情報館では11月30日まで1杯100円で新焼酎を試飲提供。館長やスタッフの説明を聞きながら焼酎の新しい体験を!
日本の酒情報館
https://www.japansake.or.jp/sake/know/data/
東京都港区西新橋1-6-15 日本酒造虎ノ門ビル1F
開館時間 10:00~18:00
休館日 土・日・祝日・年末年始
撮影・Cindy Bissing
取材・神吉佳奈子
日本酒造組合中央会
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