泡盛には、歳月をかけてじっくりと熟成させた古酒(くーす)というものがあります。古酒は、甘い香りとなめらかな舌触りが魅力で、泡盛の主産地・沖縄では、家宝のように大事に守られている古酒があるほど。ここでは、古酒のきちんとした定義と古酒の楽しみ方、そして自宅で古酒を作る手法についてご紹介します。
古酒(くーす)とは
まずは、古酒とはどのようなお酒かをご紹介します。
古酒の定義
古酒とは、泡盛(全量)を3年以上貯蔵したもののこと。現在では、「3年」、「5年」、「7年」、といったように商品名に貯蔵した年数を明記する商品も多く見かけます。
古酒のなかには「混合酒」あるいは「ブレンド酒」といって、古酒の割合が異なるものや、いくつかの泡盛を混ぜているものもあります。瓶の裏ラベルを見れば混合比率が明記されているので、リカーショップなどで古酒を求める際には確認しておくとよいでしょう。
一番古い古酒は何年物?
ちなみに沖縄で現存する一番古い古酒には、なんと約150年ものの古酒があります。
戦前まで沖縄には、100年、200年ものという古酒がたくさんあったのですが、ほとんどが戦争で喪失。しかし、150年ものの古酒は地中に埋められていたため、戦災を免れ奇跡的に今日まで残っているのです。
古酒の楽しみ方
長い歳月を経た古酒だからこそ、楽しみ方にもポイントがあります。おいしく古酒を味わえる方法をまとめました。
ロックで味の変化を楽しむ
10年ぐらいまでの古酒ならば、ロックで味わってみましょう。大きめの氷をグラスに入れ、古酒を注ぎます。ウイスキーやブランデーをロックで味わうように、氷が溶けると共に変わる味や香りの変化を楽しんでみてください。
ストレートでゆっくり味わう
泡盛の古酒、特に10年を越えるような年代物なら、古酒の味と香りをじっくりと味わえるストレートがオススメです。
古酒をストレートで楽しむには、おちょこやグラスに少量の古酒を注ぎ、とにかく時間をかけて少しずつ味わいましょう。深みと甘味が口の中に広がり、何とも言えない心地よさを感じることができます。
20年を越える貴重な古酒は、時間経過も楽しむ
もし、20年を越える貴重な古酒を味わう機会があったなら、同じストレートで飲むのでも、さらにゆっくりと味わいましょう。
具体的には、おちょこやグラスに注いでから、10~20分そのままにして空気に触れさせます。
すると空気と古酒が反応して、格別な香りを楽しむことができるのです。
待っている間は、ゆっくりと手のひらの温度で温めましょう。そうすることで、香りがよりいっそうふくらみます。
「仕次ぎ」で作った古酒を慶事で楽しんだ沖縄の人々
沖縄の先人たちは、よりおいしい泡盛をいつまでも楽しみたいと考え、古酒を熟成させる方法を思いつきました。それが「仕次ぎ」という、伝統的な古酒づくりの方法です。
まず、一番古い酒を親酒(一番甕)として、二番・三番甕に古いお酒を用意します。
親酒を年に一度のハレの日に開封し、楽しんだ後は、二番甕から親酒が入った一番甕へお酒をつぎ足し増します。次に、三番甕から二番甕にお酒をつぎ足し、最後に新しい一升瓶の泡盛を三番甕に注ぎます。
大切に保管された甕はその家の宝として、代々受け継がれていったのです。
自宅でも古酒を作れる?
リカーショップなどで買った泡盛を保存すれば、自宅でも古酒を作ることはできます。古酒を作るときのコツと、気をつけたいポイントについてご紹介します。
古酒を育てるコツ
泡盛は瓶のままでも熟成は可能です。ただ、長期間寝かせるとアルコールが揮発することもあります。そこで、1年に1度くらいのペースで少し古酒を抜き、若い酒をつぎ足してかき混ぜましょう。泡盛の質をきちんと保ちつつ、香りや味わいを深めることができます。
また、先ほどご紹介した「仕次ぎ」にチャレンジしてみるのも面白いですね。甕を何個も用意するのは難しいので、初めのうちは甕1つから挑戦することをおすすめします。
古酒を育てるときに気をつけたいこと
泡盛の原酒には、米由来の油分が含まれています。油分が泡盛の上に浮かんでくると、空気と合わさって酸化し、びんつけ油のような匂いが泡盛についてしまいます。貯蔵中、泡盛の表面に浮かんできた油は、すくいとるようにしましょう。
また、甕で貯蔵をする場合は、容器の蓋にカビが生えてしまうことがあるので注意が必要です。
おわりに
沖縄の人々に愛されてきた、泡盛の古酒。甘い香りとなめらかな味わいは、クセになりそうです。リカーショップなどで古酒を目にしたら、一度味わってみてはいかがでしょうか。また興味がある方は、オリジナルの古酒作りにチャレンジしてみても面白そうです。今回ご紹介した内容を参考にして、楽しく古酒を飲んでくださいね!
日本酒造組合中央会
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