2023年3月某日。日本酒造組合中央会の1階にある日本の酒情報館にて、「本格焼酎・泡盛」とクラフトコーラの相性探るワークショップが開催されました。〝コーラと合う〟と巷で言われていた芋焼酎をはじめ、麦焼酎、米焼酎、泡盛など特徴の異なる12種類を用意。クラフトコーラは7種をラインナップ。本格焼酎・泡盛に精通する面々と、クラフトコーラに精通する面々が会し、その相性を検証しました。
焼酎の新しい飲み方の鍵を握る「クラフトコーラ」のいま
ストレートやロックにお湯割り。従来、そのままの味わいを愉しむ飲み方で親しまれてきた本格焼酎・泡盛ですが、近年の国際化や趣向の変化によって、ソーダ割りやカクテルベースで愉しまれるシーンも増えてきました。その中でも、いま注目したい飲み方がクラフトコーラ割り。お酒の個性が消えてしまうのではと思いきや、組み合わせによってはむしろ互いの個性が引き立つ新しさがあるとか。
その検証をするべく、クラフトコーラ界を牽引するメディア「クラフトコーラウェーブ」編集長・鯉淵正行さん、世界初のクラフトコーラの造り手「伊良(いよし)コーラ」小林隆英さん、焼酎コーラ割りを提供している飲食店「IGOR COSY 渋谷本店」店長・山田敬一朗さんたちが参加。本格焼酎・泡盛に精通するメンバーとして、「日本の酒の情報館」館長・今田周三さんや、日本酒造組合中央会の理事・宇都宮仁さんなどが参加しました。
鯉淵さんによると、現在日本各地で造られているクラフトコーラはゆうに100種類以上。百花繚乱の状況だといいます。
「一般的に親しまれているコーラは、1885年にアメリカで誕生した飲み物ですが、クラフトコーラは2018年に伊良コーラ、ともコーラが発売されたのをきっかけとする日本生まれのコーラです。アルコールに比べて参入障壁が低いこと、どれも一様においしいこと、まだ競合が少なくブームになっていることなどがここまで増えている理由だと考えられます」
鯉淵さんが考えるクラフトコーラの定義は「コーラの原点に回帰して(コーラナッツと、)スパイスや柑橘、砂糖類を使い、わかりやすい快楽と、あらゆるところに作り手の想いやルーツが表現されて、享受できる清涼飲料水製造免許を有する場所で製造されたコーラ」。
大まかに2つのタイプに分けられ、100年前のレシピに基づきコーラ造りをする「伊良コーラ」に代表されるような職人技に特化するタイプと、ローカルな素材重視したタイプがあると語ります。
焼酎・泡盛の多彩なフレーバーが相性を探るポイントに
続いて、宇都宮さんによる本格焼酎・泡盛のフレーバーのレクチャーが行われました。米・麦・芋といった原料の違い、常圧・減圧といった蒸留方法の違い、彫像方法や年数の違いなどが大きく関係してきます。大まかな特徴やキーワードは以下になります。
麦焼酎
特性:減圧だと果実様。常圧だと香ばしい。
相性のよい副素材:フレッシュジュース(減圧)、スターアニス、フェンネルシード、ブラックペッパー、オーク、チョコレート、クリーム
米焼酎
特性:減圧だと果実様、麹、草様。常圧だと麦ほどではないが香ばしい。
相性のよい副素材:緑茶、ジャスミン、レモングラス、カモミール、きゅうり・メロン、タイム、ヨーグルト
芋焼酎
特性:他の焼酎より成分の幅が広い。マスカットのような香りのモノテルペンアルコール、花様、柑橘、果実様(トロピカルフルーツ)。常圧は香ばしい風味。
相性のよい副素材:フルーツ(オレンジ、金柑)、エルダーフラワーリキュール、ベルガモット、ローズシロップ、卵黄、栗、バニラ、パクチー、生姜、黒ビール
泡盛
特性:麹、草様。油洋、キノコ。甘い香り。常圧は香ばしいさ、スモーキー。
相性のよい副素材:トマト、ゴーヤ・きゅうり、メロン、キウイ、シークワーサー、パッションフルーツ、パイナップル、日本酒
最後に、今回のテーマであるコーラに含まれる要素を紹介しつつ、バーボンウィスキーとコーラを合わせた〝コークハイ〟が広く飲まれるようになった理由を解き明かしました。
「コーラの構成要素にある甘いバニラの香り。これは泡盛やウイスキーなどいろいろなお酒にもあります。バーボンの甘い香りと強いアルコール感にコーラの甘さを足すことで飲み口が柔らかくなる、飲みやすくなるというわけです」
一方、芋焼酎とコーラの組み合わせは、単に飲みやすくなる〝コークハイ〟とは一線を画するおいしさのエビデンスがあると説きます。
「なんといっても注目はフレーバー。コーラの原料であるナツメグ、コリアンダー、ネロリ香油、シナモンなどが持つフレーバーは、全部芋焼酎が持っているフレーバーです。それらのフレーバーのバランスが合わさることで、コーラでもない、芋焼酎でもない、新しい香味が生まれるんです」
ワークショップを始める前に、本格焼酎・泡盛と副素材を合わせる基本的なセオリーについて、クラフトコーラメンバーに説明。
「まずはお互いの似た香りを探すことです。たとえば、熟れたリンゴやバナナの香りがあればフルーツを、マスカットやライチや花の香りがあるものには高級烏龍茶やエルダーフラワーリキュールを、香ばしい香りがあればコーヒーや麦茶などローストしたものが挙げられます」
目の前には、特徴の異なる焼酎・泡盛がずらり12種類。クラフトコーラは7種類。さあ、次は実践です。ワークショップのレポートは次回お届けします。
クラフトコーラウェーブ
https://craftcolawave.com/
(クレジット)
取材・沼由美子 撮影・松田大成
日本酒造組合中央会
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