クラフトジンは知っているけれど、焼酎と泡盛は知らない。そんな人たちの接点となる新しい角打ちやスタンドが次々オープン。注目は昨年5月にオープンした「NOMURA SHOTEN」。〝人と酒の新たな接点を生むタチノミ・リカーショップ〟を掲げて、バーテンダー野村空人(のむらそらん)氏が手掛けた角打ちです。クラフトジンやビール、ラムに並ぶのは本格焼酎と泡盛。野村氏の感性に響いた造り手たちのボトルが作品のように並んでいます。
人と酒の新たな接点を生むタチノミ・リカーショップ
「NOMURA SHOTEN」は、新御徒町と蔵前のちょうど中間地点、今人気のカチクラエリアにあります。カチクラとは、御徒町の「カチ」と蔵前の「蔵」をかけた呼び名。もともと職人が多く、ものづくりの街として知られている東京の下町。店の目印は、斜め向かいの昔ながらの銭湯「三筋湯」。ひと風呂浴びて、一杯ひっかけるには最高! 角打ちスタイルのバーはそんな風情ある下町に佇んでいます。
オーナーの空人さんは、ロンドンのバーで働いたのち、「FUGLEN TOKYO」を経て独立。バー・ドリンクのコンサルティングブランド「ABV+」を立ち上げ、バー業界のジャンルを超えて国内外で活躍しているバーテンダーです。そんな空人さんが初めて実店舗を構えたということで、たちまち話題に。
「沖縄のラム酒の開発にかかわったとき、つくるだけではなく、どうやったら売れるのかということにも興味が出てきたんです。自分がクリエイションしている酒が売れる、飲んでもらう場をつくりたいと考えている中で、いきついたのが酒屋で試飲もできて飲食もできる、角打ちスタイルのバーでした」
誰もがふらっと立ち寄れる角打ちスタイルのバー
店内は立ち飲みスペースのほか、スツールが5席あり、店の奧にあるリカーショップで酒を買って、その場で飲むことできます。陳列棚には空人さんがプロデュースしたスピリッツのほか、鹿児島や宮崎の焼酎、沖縄の泡盛も並んでいます。ラベルを眺めていると、空人さんが表現する自由でボーダレスな蒸留酒の世界観が伝わってきます。
「お酒のおいしさをちゃんと伝えることが大事だと考えて、すべてのお酒はストレート、ソーダ割り、トニック割りで提供。僕はここではカクテルをやらないと決めています。お酒の本質を知ってもらえる場にしたかったんです」
陳列棚のボトルにかけられた札には、ストリート、ソーダ割り、トニック割りの料金が書いてあり、棚から飲みたいボトルを選び、飲み方をレジカウンターで伝えて注文。もちろん好みを伝え、スタッフに選んでもらうこともできます。そのほかお湯割りおすすめメニューには、芋焼酎に並んで、なんとジンやリキュールがオンリスト! もはや、芋焼酎なのか、ジンなのか、飲んでいるといまどきの蒸留酒に境界線がないことを感じます。
「まずはソーダ割りで飲んで、それからカクテルにつながっていくといい。この店で蒸留酒のおいしさを知って、次はバーに行きたいなと思ってもらえればいいんです」
ナッツやバオなどワンハンドなおつまみも充実
本格焼酎との出会いは、じつはつい最近と空人さんは言います。
「今まで飲んだことはあったけど、特に焼酎がおいしいと思ったことはなかったんです。おもしろくなってきたのはつい最近。バーテンダーの後閑信吾(ごかんしんご)さんが開発した『The SG Shochu』に出会ったり、国分酒造の『フラミンゴ』など、香り高い焼酎に興味をもって飲み始めたら、20年近く前の焼酎とは全く違う味わいになっていることに気づきました。僕らが取り扱う洋酒にはない香りがひっぱれたら、焼酎でもっと何か新しいことがやれると思ったんです」
泡盛との出会いは、4年前のこと。沖縄の瑞穂酒造・仲里彬さんから〝ボトルドカクテル(ボトルに詰めたカクテル)〟のオファーがあったのがきっかけ。その後沖縄の8つの離島の黒糖でつくるラム酒「ONERUM」の開発にかかわるなど、泡盛と人のつながりが広がったと言います。沖縄各地の蒸留所を巡り、空人さんの感性に触れた泡盛も陳列棚に。
角打ちとはいえ、おつまみも充実。豆板醤香るキャラメルナッツ、しめ鯖リエットトルティーヤチップス、スペアリブコンフィなど、蒸留酒のフレーバーを引き立てる気の利いたおつまみが10品余り。
中でもおすすめは、肉と野菜のバオ。鴨肉のバオの具は、鴨と長葱、長芋、オクラのXO醤
と、スパイシーでエスニックな味わいは、ボーダレスな蒸留酒によく合います。
空人さんは、現在2軒めとなる「Quarter Room」をオープンしたばかり。こちらでは自らカクテルをつくり、「アート×カクテル」の体験をつくる場として新たなチャレンジに取り組んでいます。「NOMURA SHOTEN」では、空人さんの世界観を伝える最強のスタッフたちが“人とお酒の新たな接点”を提案しています。
NOMURA SHOTEN
東京都台東区三筋 2-5-7 カミヤミスジクラマエ1F
03-5846-9755
火曜~金曜 4:00pm~11:00pm
土曜3:00pm ~11:00pm
日曜、祭日3:00pm~10:00pm
定休日 月曜
●蒸留酒900円~、そのほかクラフトビールや日本酒もあり
https://www.instagram.com/nomura_shoten_tokyo/
撮影・名取和久 取材・神吉佳奈子
日本酒造組合中央会
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