日本の酒情報館で開催されたバーテンダー向けのセミナー。座学を学んだあとは、実際に本格焼酎と泡盛を手にとり、香りを嗅いだり、テイスティングしたり。さらに協賛いただいたアメリカンスピリッツやトニックウォーターと合わせて、カクテルのインスピレーションを開くワークショップを実施。トップバーデンダーのみなさんのひらめきはどこにあったのか。熱気あふれる会場でお聞きしたインタビューをお届けします。
―――泡盛の古酒にバーボンを重ねることで、さらに熟成感を持たせることができる。 野村空人さん・NOMURA SHOTEN
「うちの店で扱う日本の蒸留酒は、焼酎と泡盛がメインで、沖縄でアドバイザリーとして参加してるラムもおいています。沖縄の造り手と交流があるので、今回は泡盛をよく知りたいと、いろいろ試してみました」
「『瑞泉KING 10年古酒』を利いたら、熟成しているのに意外とさっぱりしてライトだったので、『瑞泉』2に対して、バーボン『テンプルトン』1のハイボールに。泡盛とバーボンの2つの甘い香りを合わせたらかなりいいですね。泡盛の古酒らしさにウィスキーの樽感を少し足すだけで、さらに熟成感を感じて。擬似古酒みたいでおもしろいなと思いました!」
―――焼酎にアメリカンスピリッツを加えることで、カスクフィニッシュが演出できそう。静谷和典さん・Shinjuku Whisky Salon
「焼酎カクテルは勉強中なのですが、店では30本ほどキープしています。今回いろいろ飲んでみた中、気になったのは鹿児島の芋焼酎『大海蒼々』。マスカットや花のフレーバーを感じたので、フルーティな『エルダーフラワートニックウォーター』※と合わせたら相性がいいかなと思いました」
※イギリス・フィーバーツリー社のトニックウォーター。人工的な添加物は使用せず、植物由来の天然成分の他、砂糖、天然水のみ。プレミアムトニックウォーターのほか、エルダーフラワーやジンジャーなどを使用したタイプを取り揃えている。
「最近、小正醸造が芋焼酎『メロー小鶴』の樽を使った高品質なウィスキーを作られたりと、ウィスキーの焼酎樽熟成がジャパニーズウィスキーの一つの活路を見いだしているように思います。それをカクテルの観点から考えて、ウィスキーに樽材としての焼酎ではなく、リアル焼酎をブレンドしてはどうかなと思ったんです。
白ワインの樽でフィニッシュをかけるウィスキーがあるので、『大海蒼々』の白ワインのような香りにバーボンを合わせてみたら、深みというか、味わいに余韻が出ました。ウィスキーのグッドフィニッシュ的なものをカクテルで再現できる、そんな可能性がこれから出てくるかもしれません。」
―――焼酎はまだまだ、可能性に満ち溢れている。 田口航希さん・THE UPPER
「現在は特に利酒師など國酒全般に関して勉強中です。日本酒の認知度は海外にも既に広まっていますが、焼酎はまだまだ可能性に満ち溢れていると思うので、日本人としてもっと知識を深めていければと思っています」
「柑橘系の香りが立つ芋焼酎、『蔵の師魂 The Orange』に『エルダーフラワートニックウォーター』を試してみました。柑橘系の香りが消えないように、トニックウォーターをのせるイメージで注ぐと、どちらの味わいもしっかりと立ち、個人的によい調和だと感じて、いい発見ができました。黒糖焼酎は、香りとしてなんとなく下の方にあるイメージでした。エスプレッソなどコーヒー系のものとの組み合わせを試してみたいですね」
―――泡盛が、銘柄によってこんなにも味が違うなんて。三上 裕貴さん・Bar Arca
「バーではフルーツのカクテルをいろいろ作っているので、焼酎とフルーツの組み合わせを探ってみたいと思い、今回伺いました。じつは今まで泡盛を飲んだことがなかったんです。骨格があっておいしいですね。銘柄によってこんなにも味が違うんだというのが、かなりおもしろくて、遊べるなと思いました」
「古酒の『瑞泉KING 10年古酒』は、クセがあるのでしっかり系のフルーツと合わせると楽しそうです。甘みが濃いので、マンゴーやパイナップルなど南国系の濃厚なフルーツに合わせてみたいですね。さっぱりしたタイプの『ニコニコ太郎』は、クセが少なくすっきりしているので飲みやすく、どんなフルーツの組み合わせでもいけそうです。同じフルーツを使っても、タイプの違う泡盛を使えば、それぞれ全く違うカクテルができると思いました」
―――吟醸酒粕焼酎のフルーティな吟醸香に、華やかなジンがよく合いました。荻島 渉さん・Bar No.
「店のメニューに焼酎のカクテルはないんですが、個人的にすごく好きなので、自分の好きな焼酎を何種類か揃えています。水割り、ソーダ割り、こんなにおいしいんだよというところから知ってもらい、カクテルにつなげたいと思っているところです。今回、セミナーを受けたあとに、その場でいろいろなタイプの焼酎や泡盛を試せたのがよかったです」
「アメリカンスピリッツと合わせてみたら、泡盛とバーボンのファッティ―な、クリーミーなところがよく合うなと印象に残りました。いろいろと試した中でおいしくできたのは、福岡の粕取り焼酎『吟香露』、これにジンの『KOVAL』と『エルダーフラワートニックウォーター』の組み合わせ。芋焼酎をあわせていた人が多かったのですが、僕は吟醸香のフルーティな香りに、同じく華やかなジンの香りを合わせてみました」
次々とコメントが飛び交い、熱気あふれた日本の酒情報館。ほかにも、「泡盛の概念が変わった」、「焼酎がこんなに豊かな香りを持っているなんて」、「フルーティな芋焼酎のフレーバーに驚いた」など、たくさんのコメントをいただきました。トップバーテンダーのみなさんに本格焼酎と泡盛がもつ多様なフレーバーや味わいを体験していただき、その可能性を探ったワークショップは、大盛況で終了。バーテンダーが伝道師として、国内外で発信していただけることを期待します!
取材・神吉佳奈子
日本酒造組合中央会
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