新橋駅と有楽町駅のちょうど間に位置するJR高架下にオープンした、まるで隠れ家のようなバー「FOLKLORE(フォークロア)」。ミクソロジストの南雲主于三(なぐもしゅうぞう)さんが編み出した、本格焼酎と泡盛の新しい世界を拓くカクテルが楽しめます。
五感をフルに使って味わう、ミクソロジスト南雲さんの世界観
凛とした佇まいのなか、美しい所作で注がれる焼酎はまるで宝石のように煌めく。差し出されたカクテルに顔を近づけると、「え、これが焼酎?」とフレーバーに驚き、口に含むと重層的な味わいと深い余韻にまた驚く。五感をフルに使って味わう一杯。それがミクソロジスト南雲さんがつくる焼酎カクテルです。今回、メニューにある9種類の中から、チェストローズマティーニとオリオールの2種を解説していただきました。
クラシックなレシピを再構築して生まれた最先端の焼酎カクテル
まず、一杯目はチェストローズマティーニ。〝チェスト〟は、鹿児島弁の「えいやー」という掛け声。鹿児島の「だいやめ」(濱田酒造)を使った、鹿児島マティーニです。
「芋を熟成させることでライチのような香気成分を引き出した新しいフレーバーの芋焼酎です。ライチや薔薇のように華やかなうえ、フルーティでとても軽やか。リッチなフレーバーがあります」。あえてマティーニをアレンジした焼酎カクテルにも理由はあると言います。
「グローバルな視点で日本のお酒を伝えていくためには、グローバルなお酒の文脈にのせる必要があります。それがクラシックなカクテル。焼酎を飲んだことがない人に、いきなりクリエイティブなカクテルを出すと、どれが焼酎の味なのかわからないですよね。焼酎のマティーニっておいしいなと思ってもらえるほうが受け入れやすく、理解がしやすい。そういうお客様には、クラシックなレシピをベースに、焼酎本来のフレーバーや味わいがわかるように組み立てたカクテルをお薦めしています」
アルコール度数は27~8度。通常38度前後のマティーニよりも飲み心地はライトなのに、しっかりした味わいなのは、麹を使った一回蒸留のみの本格焼酎だからこそ。
「後味のキレをよくするために、だいやめ40㎖に対してウオッカを10㎖使っています。焼酎がもつ香りを増幅させるために、香り高い薔薇のリキュールとベルモットを少量。さらに華やかでリッチな香りが広がります」
ミクソロジーカクテルで、本格焼酎のイメージを覆す
続いて、同じ芋焼酎でも、既存の概念を変える南雲メソッドで構築したミクソロジーカクテルが、オリオール。宮崎の「千本桜」(柳田酒造)の紅芋、ベニハルカの完熟した果実のよう香りと甘みを生かして素材を組み合わせ、世界で最も美しい鳥、オレンジ色に輝く羽をもつオリオールから名付けられたカクテルです。
「千本桜にシャルドネと柑橘の果汁を少し加えて、甘みと酸味のバランスをとっています。短調にならないようにヨーグルトの上澄みのような乳酸系の香りをもつミルクパンチを、さらに複雑味をつくるためにユーカリを使っています」
Mixology(ミクソロジー)とは、Mix(混ぜる)とology(科学、〜学)を合わせた造語。芋焼酎にフルーツやハーブを組み合わせることで個性を引き出し、カクテルに昇華。芋焼酎のイメージを覆すような一杯でした。
本格焼酎や泡盛本来のフレーバーを知る、テイスティングコースも
カクテルだけでなく、単品を3種飲み比べることができるテイスティングコースも用意されています。飲みたいタイプや、産地、原材料があれば、好みでオーダーすることも可能。約80種ある中から選ばれた3種類を、まずストレートでひと口。味わったあとにはロック、水や炭酸で少し割るなどして利き比べすることもできます。いろいろ飲んでみたいとオーダーした3種類は、泡盛の古酒「おもろ2020」(瑞泉酒造)、熊本の米焼酎「武者返し」(寿福酒造)、宮崎の芋焼酎「genshu」(矢野酒造)。
「焼酎初心者の方が、焼酎と泡盛を体系的に学べるコースです。まずはストレートで味わい、香りを嗅ぎ、飲み比べてお酒の本質を知っていただきたい。3本それぞれにある、僕たちが見た酒蔵の風景や造り手から聞いた思いをしっかり伝えます。
僕たちはお客様に一番近いところにいて、造り手は一番遠いところにいる。それをちゃんとつなげていくことが僕たちにできること。これからここで、飲み手のすそ野を広げて、日本のお酒の価値を高めていきたいですね」
本格焼酎と泡盛の新しい扉を開きにFOLKLOREへ。焼酎を知っている人も、はじめての人も、きっとお酒との新しい出会いが見つかります。
FOLKLORE(フォークロア)
住所 | 東京都千代田区内幸町1‐7‐1日比谷OKUROJI G27 |
営業時間 | 14:00~23:00(L.O.22:00) |
定休日 | 第2月曜 |
電話番号 | 03-6770-8785 |
料金 | ●チャージ800円、カクテル1430円~、テイスティングコース2520円~。 |
ホームページURL | https://www.instagram.com/folklore_okuroji/ |
撮影・名取和久 取材・神吉佳奈子
日本酒造組合中央会
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